香港旅情(1)

夕闇の中NW001便は香港空港に降り立った。到着ロビーには出迎えの人もいるが他の空港に比べるとまばらで、人々は足早に市内への電車に乗るべく駅の改札に駆け込む。
空港の外に出ると、南国特有の湿った熱気が私を包んだ。気温は30度だが風がある分涼しく感じられる。大興山の山陰が夜陰の中に浮かんでいる。
遠くでは雷雲らしきものもあり、時々雲の中が光を放っている。
 
私はというと、今夜泊まるあてもなく、空港の外へ出てタバコを吸いながら、シャトルバスに乗り込む行列を眺めているだけだった。
午後10時を過ぎようとしているのに、空港の中の飲食店も銀行もまだ開いていて、ハンバーガを売る店、味千ラーメン、餅を売る店などなど、どの店もお客がいて、帰る気配も無い。
今夜の塒を探して空港内の探索することにした。到着ロビーには店も営業しているせいか、人の往来が激しい。出発ロビーはというと、二十数名の旅行者とおぼしき人々がベンチに腰掛けている。さすがにここは行き交う人もほとんどない。
そのひとつのベンチに座って一夜のベットと決め込んだ。
7階にある出発ロビーからは吹き抜けになっている階下の到着ロビーの様子も見える。何もすることがなく、ただその様子を眺めていた。
 
12時を過ぎたころ飲食街の店の明かりも消えて閉店となっていった。それから従業員が掃除を始めるのであるが、かなり念入りに掃除しているようで全てが終わったのは午前2時を過ぎていた。トランジットと思しき旅行者たちもすでに眠りに入っている。
時折、警察官の見回りもあるが、それほど厳しいものではなく、旅行者には寛大な都市である。ただ、マシンガンを持った武装警官が近づいて来たときには、ちょっと驚いた。
さすがにこの時間になると腹がすいてきた。空港に到着した時に何か買っておけばよかったと後悔した。
仕方なく寝ることにする。しかし、空腹と時折近づいてくる清掃婦の足音でなかなか寝られない。
タバコを吸いに外に出る。いつしか雷雨となっていて、激しく雨が降る。この雨は体感温度を和らげてくれて、とても有難い。
こんな時間に外にいるのはわたしぐらいなものだが、それでもシャトルバスは昼夜をとわず走っている。
明日は香港からシンセンへの越境である。見知らぬ土地での野宿と越境の心細さで寝られそうにないまま朝を迎えようとしていた。

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